名古屋高等裁判所金沢支部 昭和33年(う)60号 判決
次に職権を以て原判決の理由の当否について調査するに、原判決は其の理由冒頭において「被告人はさきに窃盗、詐欺、横領、傷害罪等により前科五犯を有するもので最後は富山地方裁判所礪波支部に於て昭和三十一年十二月十一日傷害罪により懲役拾月に処せられ富山刑務所に服役昭和三十二年九月十日刑の執行を終了した者である」旨を判示し適用法令の部において累犯加重の規定につき「刑法第五六条第一項(再犯)刑法第五七条(再犯の刑)刑法第五九条(三犯以上)」と掲記している。併し乍ら原判決の右のような判示によつては、右の第五犯目の分を除き其の余の前科につき刑の種類、範囲、刑の執行終了時期又は刑執行免除の時期が不明であり、従つて右の前科のうちいずれの分が原判示事実と累犯関係にあるものであるか否かを知るに由がない。思うに刑の加重理由となる事実については、判文上具体的にこれを明示するを要し、これを欠くにおいては理由不備のそしりを免れないところである。そうだとすれば原判決が被告人に対し累犯加重をなしているに拘わらず、累犯加重の理由となる事実を明示していないことは、刑事訴訟法第四十四条第一項に違反し、理由不備の違法があるものと謂わなければならず、原判決は此の点において破棄を免れない。
(裁判長判事 山田義盛 判事 沢田哲夫 判事 辻三雄)